プレゼンがうまく聞こえる話し方〜言葉の選び方・話し言葉変換〜

column 2024.4.26

 
「プレゼンが棒読みだと言われてしまった」「原稿があるとその通りに読むだけになってしまうけど、原稿がないと飛んでしまう」「前任者が用意した資料だから朗読になってしまう」そんなご相談をよく受けます。
 
棒読みにならないようにするには、アナウンサーやナレーターのように、原稿をきれいに読む練習を重ねればいいのでしょうか。私はそうは思いません。
 
プレゼンテーションにおいて、用意した原稿を一言一句間違えずに読むことは、あまり意味がないと言っていい…聴衆がプレゼン原稿を手元に持ちながら、間違えていないかどうかをチェックしている、なんてことはまずあり得ないためです。
 
今回は、原稿を作成する上での言葉選びについてご紹介します。
 
 

■6つの要素:内容■
 
私はトークを6つの要素に分解してお伝えしていますが、今回は<1>内容の話、特に言葉の選び方についてです。(選んだ言葉の話し方は次々回の予定。メンタルも声もスライドの見せ方も重要ですが、それはまたの機会に)


 
 

■大事なことは「伝わる」こと■
 
プレゼンテーションの言葉選びにおいて、もっとも大事なことは何でしょうか。印象に残るキーワードを入れることでしょうか。はたまた、頭が良さそうなワードを選ぶことでしょうか。
 
私は「伝わること」がもっとも大切だと考えています。どんなに素晴らしい新商品でも、伝わらなければ意味がありません。
 
「伝わるように伝える」、それを意識することで、自己満足にならず、聞き手を想定した、わかりやすいプレゼンになります。
 
そこで、私がおすすめしているのは「話し言葉変換」。そのまま読むと朗読調に聞こえるものを、話し言葉に書き換えて読むことで、聞き手に「話しかけている」ように聞こえます。

 
 
■話し言葉とは■
 
日本語には「書き言葉」と「話し言葉」があります。その区別は「文章語・口頭語」や、「文語・口語」として説明されることもありますが、日本の国語教育で用いられる用語は「書き言葉・話し言葉」のため、ここでもこの用語で説明します。
 
なお、国語科学習指導要領には、中学2年の指導事項として「話し言葉と書き言葉との違い、共通語と方言の果たす役割、敬語の働きなどについて理解すること」という記述があり、「話し言葉と書き言葉」について学習することが指定されています。(参考:『新ここからはじまる日本語学』(ひつじ書房)伊坂淳一著)
 
中学校の国語の授業を思い出してみてください。
 
たとえば「書き言葉」はこちら。
例①
私は夏休みに、家族で隅田川花火大会に行きました。いつもはテレビで見ているのですが、今年は抽選の観覧席が当選し、間近に花火を見られることになったのです。隅田川花火大会に限らず、打ち上げ花火を近くで見るのは生まれて初めて。私はたくさん予習をして家を出ました。
 
 
同じ内容が「話し言葉」になると、以下のようになります。
 
例②
あのね、夏休み、花火見に行ったんだ。隅田川の。花火大会。すごかったよ。いや、えっとね、去年まではテレビで見てたんだけど、今年はそう!観覧席で見てきたの。抽選で当たったんだよ。すごいよね。私、打ち上げ花火を近くで見るってのも初めてで。もう、これは楽しまなきゃと思ってさ、花火の名前とか予習しちゃったよね。
 
 
このように「書き言葉」と「話し言葉」を並べると、「書き言葉」は硬く、改まった、フォーマルな印象があるのに対し、「話し言葉」は、やわらかい、くだけた、インフォーマルな印象となります。

 
 
■書き言葉の原稿は失敗要因■
 
「書き言葉」のほうがフォーマルな印象があるため、多くの人は、プレゼンの原稿を「書き言葉」で用意してしまうのですが、これはプレゼン失敗の要因のひとつ、と私は考えています。なぜなら「書き言葉」は、読むための文章だからです。
 
話すための言葉は「話し言葉」です。文字(視覚)ではカジュアルに見えるものも、聴覚からの情報になれば、まったく異なる印象になります。
 
先ほどの「話し言葉」はいわゆる「タメ口」で、インフォーマルであるため、同じ内容を敬語に変更し、ラジオでリスナーに語りかけるトークとして書き直してみましょう。
 
 
例③
はい、今日はですね、夏休みに行ってきました、隅田川花火大会の話を、ちょっとここでさせていただきますね。隅田川花火大会、行かれたことありますか。私はですね、今まではテレビ中継でしか見たことがなかったんですけれども、今年はですね、なんと!観覧席で見ることができました〜!抽選の席なんですけれども、運良く当たりまして。びっくりですよね。で、実はですね、打ち上げ花火を近くで見る、っていう、これが私初めての体験で。もう、これは楽しまなきゃと思いまして、しっかり予習しちゃいましたよね。
 
 
このように、「話し言葉」は敬語になると、スピーチで使用する文章として支障がなくなります。読むための文章だった「書き言葉」は、そのまま読めば「朗読」ですが、相手を想定し、敬語で話しかけている「話し言葉」は、自然に相手に話しかけている印象を抱かせることができるのです。

 
 
■「話し言葉変換」とは■
 
「話し言葉」は日本語学でも使う用語ですが、「話し言葉変換」は一般用語ではなく、私が名付けたトレーニング方法です。その名の通り、「書き言葉」で用意したものを「話し言葉」に変換するもので、上記の例でいうと、例①例③に書き換える方法になります。
 
日本の国語教育では、「話し言葉」を「書き言葉」に変換する授業は行われますが、その逆の「書き言葉」を「話し言葉」に変換する授業は、私は聞いたことがありません。そのため、いざプレゼン原稿を作成しようとすると、慣れていない方は「書き言葉」で原稿を用意してしまいます。
 
なお、「話し言葉変換」は、その用語は使わないまでも、ラジオアナウンサーやラジオパーソナリティは、日常的に使っているテクニック。ラジオは基本的にフリートークで展開されるため、書き言葉の朗読部分があると違和感があり、原稿があるコーナーも、即興で話し言葉に変換するのが一般的です。
 
余談ですが、テレビのアナウンサー(ラジオ兼営局でない)は使わないテクニックのようで、友人アナウンサーに非常に感心されました。
 
ラジオアナウンサーのように、即興で変換するのは至難の技のため、次回は簡単にできる「3つの話し方変換」をご紹介します。
 
 

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■マンツーマンレッスンで解決!■
 
初めて「話し言葉変換」に挑戦すると、その難しさがおわかりいただけると思います。発表が差し迫っている方や、「自分の原稿を話し言葉に変換してほしい」という方は、遠慮なくご相談ください。マンツーマンレッスンなら1時間もあれば、プレゼン原稿を適度に話し言葉に変換することが可能です。

 
 
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